「なぜ、エルベ地域で白血病患者が出るのか 誰も知らない
アンゲリカ・フェルとバーバラ・ディックマンによるドキュメンタリー」
2006年 ドイツのテレビ局 ZDF放送
バラでつくったハートは、4歳のグレゴアへの最後のプレゼントだ
彼は、ニーダーザクセン州のエルベ河沿いに住んでいた
短かった生涯のほとんどを病気と共に過ごした
抗がん剤を使った科学治療、放射能治療、骨髄移植
医者は彼の命のために戦った
結果は敗北だった
今年の1月にグレゴアは亡くなった
死因は血液のがん
白血病だ
この恐ろしい病気の被害者はグレゴア一人ではない
ここから数キロ離れた墓地には9歳のアクゲラが埋葬された
11歳のセバスチャンもここに眠る
ズンケは21歳だった
みんな白血病で亡くなった
全部で4人だ
16人の子どもが血液のがんになった
ハヨ・ディークマン 厚生省・リューネブルグ
「たった5年の間のうちに、この小さな町テスペだけで
6人の子どもが白血病になった
統計学のうえではこの小さな町では60年に
60年間に、たったひとりだけが
病気になることになっている」
なぜ、このエルベ川の上流地域で
こんなにたくさんの子どもが白血病になったのか
ゲースタハト、ハンブルグから30キロの距離にあるこの町に
クリュンメル原子力発電所がある
そして、そこからわずか800メートルのところにあるGKSS原子力研究所では
放射性物質の研究がされている
どちらの原子力施設もシュレスヴィヒ=ホルシュタイン州の管轄だ
エルベ川の対岸はニーダーザクセン州だ
1990年にニーダーザクセン州のエルベ地域で最初の白血病患者がでた
その後、シュレスヴィヒ=ホルシュタイン州でも
白血病と原子力施設に関係性はあるのだろうか
エツベ地域の町の町長であるウベ・ハーデン(社民党)は絶対に関係があると断言する
ウベ・ハーデン 社民党のニーダーザクセン州議員 白血病・市民運動の会
「因果関係は明らかだ
自然な理由で、たまたま白血病になる人がいたという偶然が繰り返されたのではない
因果関係のあるからこそ、白血病患者が出た
人々は、この因果関係を知る必要がある
なのに、彼らは何も言わない」
1986年9月12日、金曜日のことだった
エルベ川上流のクリュンメル原子力発電所でサイレンが鳴り響いた
すべての放射能測定器が高い数値を示した
大惨事救援隊の男たちが出動した
作業員ヨアヒム・ケドツィオラの話
「朝の6時に制御室に入ったとき、放射能測定器はもとより、
すべての監視装置の数値が上昇していた」
放射能が漏れたサインだ
原発のどこ部分から放射能漏れが起こったのか誰にも説明が出来なかった
上司のところに行って、こんなことが起こるはずはないと言った
「すべての建物で同時に、また普段は放射能が検出されない建物でも
高い放射能が検出さるのはおかしいと」
原子力発電所は早急に確認した
放射能は発電所の内側から漏れたのではない
放射能は、外部から発電所に入ってきたとしか考えられない
しかし、放射能が発電所から漏れたのではないとすると
一体どこからやって来たというのだろう
発電所のすぐ隣にあるGKSS原子力研究所
ここで何かがあったのだろうか
もう一つの疑問の答えはでていない
はっきりしていることは、1986年9月12日に
この二つの原子力施設の近くで、高い放射線が測定されたことだ
そして、もうひとつ、はっきりしているのはそれから4年後、
他のどこでもない、この場所で最初の白血病患者がでたことだ
ユルゲンス一家はテスペに住んでいる
彼らの家は堤防のすぐそばにある
堤防の向こう、エルベ川の対岸に、二つの原子力施設が見える
不治の病はそこから来たと、ユルゲンス夫妻は考える
彼らの娘、ニコルは1991年に白血病になった
ピアテ・ユルゲンスは、エルベ周辺地域の白血病に関するものを
すべてスクラップしている
写真、新聞記事、近所の子どものお悔やみ広告
彼らは白血病で亡くなった
ピアテ・ユルゲンス
「これらは、付随現象よ これを見るのは辛い?」
16歳になったニコルは、当時の自分が死のすぐそばにいたことを理解している
ピアテ・ユルゲンス
「入浴中、ニコルの身体のあちこちに小さな青いあざがあることがわかったわ
何かにぶつかってできたような青あざじゃない
とても小さな青あざよ
次の日、フォルケル先生に診てもらいに行ったわ
先生にはすぐにわかったはずよ
彼は、すでにたくさんの同じ病気の子どもたちを診てきていたもの」
フォルケル小児診療所はすぐ近くにある
1991年に、小さなニコルが5人目の白血病患者としてやってきたとき
小児科医は警鐘を鳴らした
フォルケル小児診療所 エベルハルド・フォルケル小児科医
「役所に知ってもらおうとした そして役所が何かをしてくれるように頼んだ
(記者)どこの役所に連絡したの?
労働社会省、環境省、ニーダーザクセン州とシュレスヴィヒ=ホルシュタイン州のだ
何の音沙汰もなかったよ
すべての手紙を書き留めで送ったけど、
最初の頃は、一度も返事をもらわなかった」
1990年から1991年の間に6人が白血病になった
5人の子どもと、1人の若い男性だ
1991年、フォルケル医師と、ウーバーハーベンの州議会議員たちとそして
ユンゲンス夫妻をはじめとする親たちは
「白血病・市民運動の会」を結成した
世論が高まってくると、これまで口を閉ざしていた政治家が急に
問題の解明を約束するようになった
ヴァルター・ヒラー ニーダーザクセン州の元労働社会省長官
「因果関係を見つけなくてはいけない」
1992年にシュレスヴィヒ=ホルシュタイン州で
また、しばらくあとでニーダーザクセン州でも
調査委員会が設立された
国際的に知られる研究者たちに、調査がゆだねられた
毒物学者、物理学者、医学者、
そしてレングフェルダー教授のような放射生物学者も
エドケンド・レングフェルダー教授 ミュンヒェン大学 放射生物学
「委員会は12年かけて原因を調査した
考えられうる原因は全て除外された
科学物質、農薬、化学肥料
残されたのは、放射線被曝で
おそらく、これが白血病の原因であろうという結論になった」
レングフェルダー教授とその仲間たちは
公にされていない放射能漏れ事故があったのであろうと推測する
そして、それがエルベ地域の白血病の原因であったろうと
公にされない事故が原因で1986年9月12日に
異常に高い放射線が測定されたのだろうか
この日、いったい何が起こったのだろうか
原子力発電所のかつての所長は懸念されることは何もなかったという
彼の見解では、この日
*1自然界で、放射性物質を含んだラドンガスが発生し
それが通気口から発電所の中に入り込んだというのだ
だから、サイレンが鳴ったのだと
さらに、数日前からの逆転層によって、大気の対流が抑制されていた
大気が停滞しているから地表から発生した放射性物質を含むラドンガスが
広がったのだと、それが今日までの公式な見解である
ZDFの質問に対する、ドイツの気象台の回答を引用しよう
大気の上下間の対流を抑制するような、逆転層は
この日、観測されなかった
地表近くの高濃度のラドンガスが、原発の内部に入り込んだのだという
クリュメル原子力発電所では地上40メートルのところから
外気がとりこまれる
この高さからラドンガスが入り込むのだろうか
連邦放射能防護局はおそらく不可能だと言う
ゲラルト・キルヒナー 連邦放射能防護局
「外気のラドンガスが人体に危険を及ぼすほどの
高濃度になることはあり得ないだろう
これは確実に言えることだ
我々のこれまでの調査結果では、
ドイツ国内で、そのようなことが起こることはあり得ない」
国の放射能保護局が、そのように言うのだ
その管轄である、シュレスヴィヒ=ホルシュタイン州の放射能保護局は
原子力発電所を擁護する
放射線は自然界から検出されたものだと
ブルーノ・トマウスケ クリュメル原子力発電所 社長
「我々の計測した値は、州の放射能保護局によって調査されている
放射能保護局は我々の見解を認めた
彼らが我々の見解を認めた時点でこの問題は解決したのだ」
連邦と、州、ふたつの異なる見解のどちらが正しいのか
観測結果が教えてくれるだろう
放射線が、自然界のラドンガスから来たものなのかどうかを
しかし、われわれのテレビ局はその結果を知ることができない
インゲ・シュミッツフォイアーハーケは白血病研究委員会のひとりだ
医学物理学の教授でもある彼女は
白血病の原因について、14年間研究をつづけている
インゲ・シュミッツ・フォイアーハーケ教授 白血病研究委員会
「これが自然界の放射能で起こったことだとは
はじめから、信じることができなかった
一度に大量の放射能が解き放たれたことによって起こったことでしか
この白血病が爆発的に増えたという生物学的現象は説明できない」
物理学者である彼女は、さらなる放射能の証拠を探した
そして、原子力施設のすぐそばにある村で証拠を見つけることができた
村には、放射能のことなど何も知らない人々が
古いかやぶき屋根の下で暮らしていた
村人の女性
「この梁の下から埃を吸い取って、袋の中に集まった物質を調べたの
プルトニウムの同位体が見つかったわ
他に、超ウラン元素も
このような物質は、普通の土壌には存在しないわ
原子力施設のようなところでないとお目にかかれない、特別な物質よ」
つまりは、人工的に作られた放射性元素である
物理学者の彼女は、さらに放射能が外に漏れ出したことを暗示するものを見つけた
それは、樹木の中に貯蔵されており
切断面の上に重ねられた印画紙が 放射線によって感光する、
ということによって目で確かめることができる
年輪が濃く写っている部分は、この木が1986年に被曝したことを示している
周辺環境に放射能が漏れたことが、これほどはっきりと証明できるのであれば
人間もその影響を受けたはずであると、研究者たちは確信している
ブレーメン大学の放射線医療の研究者は、
エルベ川流域の小児白血病患者の家族の染色体に突然変異が起こっていることを確かめた
ニコル・ユルゲンスの父親もその一人だ
ヴォルフガング・ホフマン 放射線医学者・疫学者
「こちらにあるのは、突然変異した染色体です
となりは、普通の染色体
このふたつの染色体の違いは、通常のものにはくびれが一箇所だけにあるのに対し
もう一方には、くびれが二ヵ所あることです
これらは、放射線に被曝した細胞にあらわれる特徴的な突然変異で
健康な細胞がこのように突然変異を起こすことはありません」
放射能に汚染された屋根や樹木、染色体の突然変異、
住民たちは大きな不安を感じている
ビアテ・ユルゲンスは説明を求めている
ビアテ・ユルゲンス
「私たち、エルベ川流域の住民が安心して眠れるように、
原因を解明してもらわなくてはならないわ
私たちは静かな日常を取り戻したいのよ」
1994年から1996年にかけて、さらに4人の子どもが白血病になった
すでに10人になる
白血病・市民の会は、この問題の確かな答えを求めて
2000年の年末に自ら専門家の調査を依頼した
物理工学者のハインツ・ヴェアナー・ガブリエルはその一人だ
彼は長年ドイツ内務省の原子力委員を務め、20年以上にわたって
原子力発電所の開発に携わってきた
ふたつの原子力施設の周辺の土壌を調べたとき
原子力の専門家である彼はショックを受けた
ハインツ・ヴェアナー・ガブリエル 物理工学者
「土壌の調査のために、紙の上に土の成分をのせて観察していたとき
偶然ころころ転がる物体を発見しました
自分の目を疑いました
これまでの仕事で何度も見てきた、小さな球状の物体を見たのです
核燃料でした」
ガブリエル氏が超高温ガス冷却炉の開発に関わっていたとき
このタイプの原子炉では球状の核燃料が利用された
エルベ地域の土壌にある球状の物体は核燃料なのだろうか
これは何を意味するのだろうか
白血病・市民の会は、ギーセンとマーブルクの大学の
原子物理学者や化学者に球状の物体の検査を依頼した
結果は確たるものであった
球状の物体の中には、プルトニウム、アメリシウム、キュリウムといった
放射性物質の存在が確認された
球状の物体は本当に核燃料だったのだ
それも特別に破砕力の強い核燃料で、様々なものに利用することが可能だ
セバスチャン・プルークバイル 物理学者・ドイツ放射能防護委員会
「たくさん研究者が論文に書いているように
これは様々な原子力技術に応用できます
原子力発電にも使えるし、小型原子爆弾の開発にも利用可能です」
科学者たちが知りたいのは、この核燃料で原子爆弾がつくれるかどうかではない
この球状の物体が、人体にとってどのくらい危険かということを知りたいのだ
白血病の専門家であるヴォルフガング・ホフマン教授は
人体に悪影響を与える可能性を指摘する
ヴォルフガング・ホフマン
「場合によっては、まだ放射性物質が残っていると思われます
これらの放射性物質は、半減期の長いものでありますし
強い放射能が存在することがおおいにあります
*2土煙が舞い上がったり、土壌を動かしたりするとき、例えば
それらを吸い込むことであらたに人体が傷つけられる危険があります」
プルトニウムは、小さな埃と一緒に肺の中に吸い込まれる
肺の中のプルトニウムの一部が血管の中に入り込み
血流によって骨髄まで運ばれる
骨髄にたどり着いたプルトニウムは
血液を作り出す造血幹細胞を攻撃する
造血幹細胞の遺伝子に突然変異が起こって
細胞がガン化し、白血病が引き起こされる
ヴォルフガング・ホフマン
*3「また別の可能性としては、放射能を浴びたことで住民の配偶子、
つまりは精子や卵子が傷つけられ
それから何年も経った後で、彼らが親になるときに
その子どもたちに危険が訪れることが考えられます」
この球状の物体は、どのようにしてエルベ流域の
土壌に入り込んだのだろうか
ここでまだその原因が明らかにされていない
1986年9月12日の出来事が新たな意味を持ちはじめる
セバスチャン・フリークバイル 物理学者・ドイツ放射線防護委員会
「1986年、チエルノブイリで事故があったこの年の秋に
エルベ川沿いのGKSS原子力研究所で炎があがっているのを
みたという目撃情報がある」
目撃者の女性は炎を見たことを認めた
そして、1986年9月に目にしたことをZDFに語ってくれた
彼女は匿名のインタビューに応じてくれた
目撃者の女性
「車で職場に向かうところでした
1986年9月12日の朝早くのことです
クリュンメル原子力発電所とGKSS原子力研究所の間に
火柱が立っているのが見えました
煙は出ていませんでした
10メートルくらいの高さだったでしょうか
上の方が光っていて、赤い火の粉のようなものが
舞い落ちていました。
現実の光景だとは思えませんでした」
オットー・クーアヴァールは、当時ラウエンブルク水路・船舶管理局の
船長としてエルベ川を船で走っており、そこから炎を見ることが出来た
オットー・クーアヴァール 目撃者
「そうだ、あの炎はGKSS原子力研究所から出ていたんだ
煙はなかった、とても変化に富んだ色をしていたよ
うまく説明できない色だ
なんというか、虹みたいな、でも虹とも違う色だった
青に、緑に、黄色に、とても太い火柱だった」
彼の隣人のベアンハルド・リューアも自宅から炎を目撃している
ベアンハルド・リューア 目撃者
「わしと家内はちょうど外にいて、この家の前で
炎が光るのをみたんだ
いったい何が起こったのかと思ったよ
最初は火事かと思ったけど、火事には見えなかった
なんというか、黄色かったんだ
とにかく大部分が黄色くて緑色の部分もあって、そして青みをおびていた
さらに、その背景に雲があるように見えたんだ」
ヴォルフガング・ホフマン
「もし、炎が燃えている場所にこの球状の核燃料があった場合
それが熱上昇風に乗って半径数キロの範囲にばらまかれることは
容易に想像できます」
ZDFがこの地区を管轄しているゲースタハト消防署に問い合わせたところ
このような火災の情報は公開するものではないし
また公開することが不可能であるとの回答をもらった
というのも、1986年9月の情報が残っていないのである
よりによって消防署が火事になり、全てが燃えてなくなったというのだ
1991年、最初の白血病患者が出た年に・・・
調査委員会の学者たちのほとんどが、球状の物体はGKSS原子力研究所近くで
起こった火事、もしくは爆発によって近隣にばらまかれたと確信している
GKSS原子力研究所はこれを否定する
ヴォルフガング・カイサー GKSS原子力研究所 所長
「放射能が外に漏れ出すような爆発や火事はありませんでした」
しかし、1986年の8月と9月の衛星写真を見比べてみると
奇妙な変化を見ることができる
たった1ヵ月の間に敷地内の一部に大きな変化があったことが見てとれる
ちょうど炎が目撃された場所である
ヴォルフガング・マウザー教授 ミュンヘン大学 地理学研究所
「この変化がみられる箇所が、ちょうどあの出来事が起こった場所だと思われます
画像のそれぞれの点を見比べると、9月の画像では8月よりも
植生が後退していることがわかります」
この変化は航空写真でも記録されていた
実際の現場に行くと、さらにはっきりわかることがある
原子力発電所とGKSS原子力研究所の間に、直径100メートルほどの
クレーターのような穴があり、その場所に生えているのは驚いたことに
まだどれも小さくて若い木々なのだ
球状の物体が周辺にばらまかれた事故は、このクレーターがある場所で
起こったのだろうか
少なくとも、この小さな球状の物体の存在はだれにも否定できない
GKSS原子力研究所ですらも
ヴォルフガング・カイサー GKSS原子力研究所 所長
*4「このあたりでたくさんの小さな球状の物体が発見されましたが
それらは放射性物質とは何ら関係のないものです
球状の物体は、生物によって作られたものだったり陶器だったりしますが
いったいそれがどこからやってきたのか、我々にもわからないのです
火力発電所か、焼却炉のような場所で石炭などが燃焼したときに生じる
灰の一種ではないでしょうか」
ギーセン大学とマーブルク大学の研究者たちの2001年の検査結果は
それに異論を唱える
核戦争防止国際医師会議は、イオン化放射線を外部に漏洩させた容疑で
クリュンメル原子力発電所と、GKSS原子力研究所、
シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州の財務・エネルギー省を刑事告発した
リューベック州裁判所検事局は、たった1年で捜査と訴訟手続きを終了した
容疑を立証する証拠が少ないというのがその理由だ
2001年から2004年にかけて、さらに5人の子どもが白血病になった
すでに15人である
2004年11月1日に騒動が起こった
シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州の調査委員会で12年間調査してきた
8人のうち、6人が委員を辞任した
公的な機関から長年に渡り組織的に研究を妨害されたというのが
辞任の理由だ
オトマー・ヴァッサーマン教授 白血病委員会シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州
「私たちは、たいへん重要な指摘をしているのです
エルベ地域の二つの原子力施設の間で、1986年に事故が起こり
周辺が放射能で汚染されたのです
すべてが闇に葬られました
検察庁も、犯罪調査局も、私たちに協力してくれない
一般市民が知ることが許されない何かがあって
それをもみ消すための圧力がかかっているのです」
しかし、第一線で活躍する学者たちによる、このような激しい批判は無視された
ギッタ・トラウアーニヒト(社民党)シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州の厚生大臣
「小さな球体、それとも球状の物体って呼んでたかしら、
そこから放射線なんて出ていないわよ
GKSS原子力研究所で起こった事故がもみ消されたなんてデマよ
ばかげているわ
見当はずれもいいとこよ」
シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州の委託調査を参照するようにおっしゃった
当時の環境大臣クラウス・ミュラー氏の意見は
クラウス・ミラー(緑の党) シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州の元環境大臣
「これらの調査はすべて同じ結果に辿り着きました
原子力発電所やGKSS原子力研究所で白血病の原因になるような出来事はなかったのです」
この調査にシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州は、450万ユーロを支出したにも
かかわらず、300万ユーロの予算を使った最も高額な調査では事故による放射能の
上昇について何も調べられなかった
この調査は全く別の問題を取り上げている
引用:
通常運転中の原子力発電所による放射性物質の排出は
白血病や悪性リンパ種のリスクとなり得るか
引用終わり:
エルベ地域の小児白血病の調査とはなんの関係もない研究である
ヴォルフガング・ホフマン教授 放射線医学者・疫学者
「私たちの調査には、はじめから違う問題が取り上げられており
この調査では、エルベの問題を解決することはできないのです
私たちの調査では、エルベ地域の子どもたちの白血病の原因について
何も語ることができないのです」
通常運転中の原発による影響と、原子力研究所から放射能が漏れた可能性と
その影響、まったく次元が違う調査である
いつのまにか、論点がすり替えられてしまっている
もみ消さなくてはいけない何かがあるのだろうか
エルベ地域の住民は、政治家の言うことなど信用していない
ウベ・ハーデン 社民党のニーダーザクセン州議員 白血病・市民運動の会
「1986年にチェルノブイリの事故が起こった時点で
原子力産業なんてやめるべきだった
それだけのことだ
原子力の平和利用など、終わりにするべきだったんだ」
これだけははっきりしている
ここ以外の土地で、こんな風にたくさんの子どもたちが
白血病で死んでいる場所はないのだ
世界中のどこを探しても
ヴォルフガング・ホフマン教授 放射線医学者・疫学者
「エルべ地域は統計上、小児白血病の発症率が最も高いのです
世界中の学者が発表した論文を読んでも、これほど狭い範囲で
これほど短い期間にこんなにたくさんの小児白血病が
報告された例は見つかりませんでした」
にもかかわらず、シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州の調査も
ニーダーザクセン州の調査も、白血病の原因を見つけることができないでいる
シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州は2004年に
エルベ地域の調査をまとめたファイルを閉じてしまった
ニーダーザクセン州も調査終了の判を押してしまった
しかし、我々が見つけた放射性物質はどこから来たのかという
疑問は残ったままだ
エリッヒ・ヴィヒマ教授 白血病専門委員会
「大気圏外で行われた核実験か、チェルノブイリの事故からきたのではないかと思う」
2004年の12月に、白血病市民の会と核戦争防止国際医師会議の要請を受けて
新たな検査にまわすための土壌サンプルが採集された
ZDFが検査に同行した
法律家の立ち会いのもとにサンプルをいれた容器の蓋が閉じられた
有名な鉱物学研究所が土壌サンプル中の放射性物質の検査を承諾してくれた
しかし、その二日後に調査を断ると連絡が入った
研究所の所長はZDFにこの球状の物体には関わりたくないと語った
この調査を引き受けることで、多くの危険な問題を抱えてしまうというのだ
我々がこの球状の調査をしたいのであれば、犯罪調査局か
警察に依頼するべきであるとも
警察から研究所に公式な調査の依頼がくるはずだと
この二日の間での彼の心境の変化に驚かされた
ZDFは国内外の17の研究所に、エルベ地域でみつかった
球体の放射性物質の調査を依頼したが、返事がないか調査を断られるかの
どちらかであった
なぜエルベ地域の白血病に関する調査依頼に
たくさんの研究所が難色を示すのであろうか
ハヨ・ディークマン リューネブルグ 厚生省
「たいていの研究所は、原子力産業もしくはIAEAのような国際機関からの
調査の依頼によって成り立っているのです
もし研究所が、原子力産業に不利になるようなことを認めたら
業界での風当たりが強くなります
将来的に調査の依頼が来なくなる、という形で制裁を受けることになるのです」
ヴァインハイムにある私立の地理学研究所が、土壌サンプルに含まれる
鉱物の成分分析をしてくれることになった
ヴェアナー・フーアマン氏は土壌サンプルの中に
球状の物体があることを確認した
彼の分析の結果は
ヴェアナー・フーアマン 鉱物学者
「この球体は自然にできたものではありません
この土壌には、自然界では中に含まれるはずのない構成要素が存在します
この断片は、黒色の金属でつやがあります
これが例の球体なのです」
フーアマン氏は磁石を取り出して、球体の表面が金属によって
覆われていることを見せてくれた
ガイガーカウンターが放射線を測定した
ヴェアナー・フーアマン 鉱物学者
「サンプルの中には通常の5倍もの放射線が計測されたものがありました」
土壌が放射能に汚染されていたことを示す証拠だ
しかし、この球体が一体どのような危険をはらんでいるかは
実際にその中身を調べてみないとわからない
そういう高度な分析ができる実験施設は数が限られている
ミンスクのサハロフ国際環境大学のヴラディスラブ・ミロノフ教授に
土壌のサンプルの採集場所を伏せたまま調査してもらうことになった
チェルノブイリの事故以来、ここでは数多くの放射能汚染の調査が
なされており、世界的にその研究が認められている
原子物理学の教授は、プルトニウムとその取り扱いの研究における第一人者で
ユネスコ、EUの委員会、欧州原子力共同体のために仕事をしている
我々の土壌サンプルの分析結果がでるまで6ヶ月間、待つことになった
結果は明白で、またセンセーショナルなものであった
ミンスクの大学による分析結果は、GKSS原子力研究所付近で採集された
球体に放射性物質が含まれることを証明した
ヴラディスラブ・ミロノフ教授 原子物理学者サハロフ国際環境大学
「ここで見つかった同位体の存在比は、間違いなく人工的なものですが
これは、チェルノブイリの事故によるものとも核実験によるものとも違う比率です
この放射性物質がどこからきたのか、その答えはドイツで探してください」
この分析結果をドイツの物理学者にみてもらった
ミンスクの分析結果に対する、彼らの意見を述べてもらった
専門家たちは、ミンスクで分析されたサンプルがどこで採集したものか
知らせていない
彼らの評価も疑問の余地のないものだった
引用:
このサンプルには人工的に加工されたウランである、
濃縮ウランと劣化ウランが含まれている
引用終わり:
また別の物理学者は
引用:
この放射性物質は、原子炉、もしくは再処理工場にしか存在しないものである
ドイツ国内で、これほど高濃度のトリウムやプルトニウムが検出されることは
驚きに値する
引用終わり:
このサンプルがエルベ地域で採集されたものであることを知らせると
彼らは匿名でいることを望んだ
彼らはミンスクの分析結果が事実であること認めた
エルベ川沿いの土壌の中には、人工的に作られた放射性物質が含まれているのだ
ギーセン大学の原子物理学者、シャルフ氏はそのことを確信している
ミンスクで分析された、プルトニウム、トリウム、ウランの比率が立証するものは
ディアク・シャルフ 国際放射線防護・中央委員会 ギーセン大学
「ミロノフ教授の分析結果は、この物質が核実験やチェルノブイリ事故で
できたものではないことをはっきりと証明しています」
放射線測定技術を専門とする学者が疑問に思うこととは
ディアク・シャルフ 国際放射線防護・中央委員会 ギーセン大学
「なぜ球体がゲースタハトの土壌から出てくるのでしょうか
もし、これがチェルノブイリもしくは核実験から来たのであれば
ドイツ国内の至るところで発見されるべきではありませんか
でも、そうではないのです」
今日まで白血病の原因は解明できなかったし、エルベ地域のすべての
土壌に球状の物体が含まれているわけではないが、依然として
つじつまのあわない現象が残っている
核物質を扱う二つの施設のすぐそばに、世界で一番小児白血病の
発症率が高い地域があるというのは奇妙な話である
今日まで調査の終わっていない、例の原子力施設の事故を示す間接的な証拠
自然界に存在しない、高濃度の放射性物質の存在を証明する学術調査の結果など
エルベ地域の調査を再開するべき理由は十分にある
GKSS原子力研究所は、我々の集めた情報を元に
調査を始めることを承諾した
ニコルとその家族の長い苦しい治療の日々は終わったようだ
しかし、病気が再発するかもしれないという不安は消えてなくならない、
これから先もずっと・・・
ビアテ・ユルゲンス ニコルの母親
「治療が終わって2年くらいしたら、ニコルの身体のあちこちに
黒いシミがててきて、今度は何の癌かしらって思ったわ
病院に行ったら、これは病気じゃない、抗がん剤の副作用による
色素沈着だって言われたわ
こんな不安を一生かかえていかなくてはならないのよ」
ニコル・ユンゲンスは生き延びた
しかし、この恐ろしい白血病の被害者はその後も続く
2005年12月1日、また1人の子どもが白血病になった
16人目の発病者である
《文字おこし終了》
■動画につけられたコメントによる補則
・2011年6月 19人目の小児白血病患者
■この件についての参考リンク
仏教の変遷と作品から見る賢治の仏教を考えるさんのこちらのページ